Foth-flex I
フォスフレックスは1933年ドイツ製。戦前のカメラでありながら、フォーカルプレーンシャッターを採用した異端の二眼レフだ。フォーカルプレーンシャッターの機種は、他に木製二眼レフ・メントレット(Mentorett)があるがコレクターズアイテムと言えるほど数が少ない。
掲載機は75mmF3.5レンズ付だが、バリエーションモデルに驚異的な開放F2.5レンズ付きのものもある。6x6二眼レフ史上F2.8はロライフレックスなど幾つかあるが、F2.5というのは例が無い。これもレンズシャッターの取り付け径にとらわれる必要が無いゆえのスペックだろう。
ただし、レンズの描写を「驚異的な写りの悪さ」と揶揄した記載をどこかで見た記憶があり、設計上の無理もあってか全体的に写りの評価は高くないようだ。
他のバリエーションとして、スローシャッターの有無やピントノブの仕上げ違うモデルなどを確認している。
1型発売の翌年、前板中央に勾玉状のピントレバーを装備したフォスフレックス2型が発売された。その勾玉の位置が右側のモデルと左側にあるものの両方が存在しており、利き腕対策という訳でもないだろうが資料などもほとんど無く詳細は不明である。
フォスフレックスは、操作方法もかなりの独自路線。外観からはピント合わせで前板全体が繰り出すように見えるが、実際はレンズのみが前後する仕様。フイルム送りは1枚目を赤窓で確認して、2枚目以降は左側面下にあるカウンターの数字を合わせる方式。
レリーズレバーも側面にあり、右面下部にあるシャッターダイヤルはそのままダイヤルを回すとシャッターがチャージされ、横に引き出して回せばシャッター速度を変更できる。シャッターダイヤル上部の赤点のあるレバーは、セルフタイマーのチャージ用。
絞りは逆転の発想か、テイクレンズ自体を回転させて指標をセットする方式で、レンズエレメントが同時に回転するというのは他に例を見ない。ただ独創的な仕様に走っただけではなく、それぞれの操作性は意外なほど良好であることを付け加えておく。
その特徴を書き連ねてゆけばきりの無い異端の二眼レフではあるが、販売当時の価格はローライフレックス等より格段に安かったようで、日本にも早い時期に輸入されていたようだ。
当時の日本語の取扱説明書は、「精巧と低廉をモツトーとするフォス二眼レンズカメラ」とのコピーから始まる。
フォスフレックス1 オリジナルデータ表
- メーカー 生産国 生産年
- Foth フォス ドイツ 1933年
- ビューレンズ
- Foth Anastigmat 75/3.5 フォス アナスチグマット
- テイクレンズ
- Foth Anastigmat 75/3.5 フォス アナスチグマット
- 絞り 絞り羽根 最短撮影距離
- 3.5~25 15枚 1.5m
- フード取り付け
- 30mm被せ式
- シャッター
- 不明 B・25・50・75・100・200・500 縦走りフォーカルプレーン
- シャッターチャージ
- 独立式 シャッターダイヤル兼用
- レリーズ
- 右側面レバー 押し下げ式
- 巻き上げ 巻き止め
- 右側面ノブ 1枚目のみ赤窓 以降カウンター合わせ
- ピント合わせ
- 左側面ノブ
- スクリーン 視差補正
- 通常 補正無し
- 内面反射対策
- 無し
- フイルム送り
- 下→上
- 実測サイズ 三脚ネジ
- H144×W81×D92mm 1065g 大ネジ
- データ表の見方
部分拡大画像&ポイント解説
管理人の戯言
二眼里程標掲載機の中では、ウェルタ・パーフェクタに並ぶ異端の二眼レフです。ダイヤルを引き上げてのシャッター速度変更は、ちょっとバルナックライカ風味?残念ながら保存状態が悪いものが多く、シャッター不動が大半のようですが掲載機は何とか動く状態。ただ、シャッター幕がヨレヨレで速度が出ませんでした…。
シャッターダイヤルやカウンター、ルーペ辺りも弱そうですので、購入時には要確認。実用というのはナカナカ難しいかもしれませんが、フォスフレックスの内部構造等について、掲示板の「二眼レフ情報・質問スレッド」172~180に大変貴重な情報をお寄せいただいておりますのでご参考に。
当時の日本語の説明書には、スクリーン上での視差補正機構や2秒シャッターの記述があるのですが掲載機とは相違。左右の勾玉カム問題もありますし、細かな仕様違いというのはかなり存在するようです。
- 独断の5つ★(平均が★★★・☆は0.5換算)
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- 人気度…★☆
- 使いやすさ…★★
- 見つけやすさ…★★ F2.5モデル★☆