Ikoflex III
機構的な部分でローライフレックスに後れを取っていたツァイスイコンが、巻き返しを図って1939年に投入したフラッグシップモデル・イコフレックス3型。
ツァイスイコンの威信を掛けた高級機であったが、独ソ開戦などもあって生産台数はさほど多くない。
厳密には、前年に2型のデザインを踏襲した「3型」が発売されてたのだが、掲載の3型とは機構的にも全く別のモデル。現在では当機を通常の「III型」、先代の3型は2型の改良版扱い「II/III型」といった表記をされることが多い。
イコフレックス3型は、テイクレンズに80mm開放F2.8の大口径テッサーを搭載したことが最大の売りと言えるだろう。ライバルのローライがこのスペックのレンズを採用するのは、戦争を挟むとはいえ11年後のことである。
フイルム装填はスタートマーク合わせ方式で、戦後当たり前のように普及した機構だが、採用したのは当機が最初であったと言われている。
また、フイルム巻き上げもクランク式となり、180度弱の軽い動作で操作可能。巻上げに連動しシャッターチャージがされるセルフコッキングと、カウンターの自動復元も実装されている。
シャッターは最高速1/400秒のコンパーラピッド。シャッター速度と絞り値は前板上部の小窓で確認可能で、これは先代の旧3型から採用されていたもの。シャッターレバーは、イコフレックスシリーズの特長とも言うべき右側面上部にあり、押し下げてレリーズする方式。
イコフレックス3型で最も目を引くのは、やはりピントフード前面のアルバダファインダーだろう。ハーフミラーを用いているため前面から見れば鏡面、背面から覗いた時には鮮明なブライトフレームが浮かび上がる。
ピント合わせに連動してピントフード前面が傾斜し、視差を補正する仕組みを採用しているのだが、残念ながらアイレベルでのピント合わせ自体は出来ない。
そのアルバダファインダーを支えるピントフードも凝った造りで、前面・背面はいわゆる「片持ち式」で位置固定がされ、ピントルーペもワンタッチで跳ね上がる。フードを閉じた状態では、ハーフミラーの保護もあってか背面の板が上に来るという、これもまた珍しい仕様だ。
当機と同じくアルバダファインダーを装備したレンズ交換式・露出計を内蔵の35mm二眼レフであるコンタフレックスは「ツァイスイコンのお道楽」とも揶揄されだが、イコフレックス3型は道楽の要素を残しつつも実用を重視した仕様と言えるだろう。
イコフレックス3 オリジナルデータ表
- メーカー 生産国 生産年
- Zeiss Ikon ツァイスイコン ドイツ 1939年
- ビューレンズ
- Teronar-Anastigmat 80/2.8 テロナー アナスチグマット
- テイクレンズ
- Carl Zeiss Jena Tessar 80/2.8 カールツァイス・イエナ テッサー
- 絞り 絞り羽根 最短撮影距離
- 2.8~22 10枚 1.1m
- フード取り付け
- 35.5mmねじ込み式 37mm被せ式
- シャッター
- Compur Rapid B・1・2・5・10・25・50・100・200・400
- シャッターチャージ
- 巻き上げ連動式(セルフコッキング)
- レリーズ
- 右側面上部レバー 押し下げ式
- 巻き上げ 巻き止め
- 右側面クランク スタートマーク合わせ 自動
- ピント合わせ
- 左側面ノブ
- スクリーン 視差補正
- コンデンサーレンズ 補正無し
- 内面反射対策
- 円筒
- フイルム送り
- 下→上
- 実測サイズ 三脚ネジ
- H153×W76×D104mm 1035g 大ネジ
- データ表の見方
部分拡大画像&ポイント解説
管理人の戯言
話題に上るアルバダとテッサーだけでなく、複雑な形状の革部分とアルミのシルバーによって非常に引き立つ外観です。アルバダファインダーと80mm2.8テッサーで、かなりフロントヘビー。それはツァイスイコンも承知のようで、前板の下に脚が付いていて転倒防止対策がされています。
2a型などと同じく、ピントノブはちょっと高さが足りない気が。ピントノブの素材は、ベークライトのものが多いようですが当機はアルミ製。操作性などの違いは特に無いかと思います。
そんなに多くの固体を手に取ったわけではないのですが、やはり巻き上げ関係の不具合は多いようで、ファインダーの剥離やカウンター不良も注意です。掲載の固体も完全ではないのですが、セルフタイマーやシャッター前面のインジケーターなど、実用に関係無い部分の不具合のみで何とかいけてます。
- 独断の5つ★(平均が★★★・☆は0.5換算)
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- 人気度…★★★☆
- 使いやすさ…★★★☆
- 見つけやすさ…★★