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Superb

スパーブは、戦前にドイツのフォクトレンダーより発売された特徴的な二眼レフカメラだ。大メーカーでありながら、フォクトレンダーのピント合わせが出来る二眼レフは当機とフォーカシングブリラントしかない。
スパーブには前期・後期のバリエーションがあり、掲載機は後期型。前期型は吊り金具の形状が異なり、ピントフード中央を倒すアイレベルファインダーが無い仕様。また、掲載機は背面中央にも赤窓があるが側面のみのものの方が多い印象だ。

ライバル・ローライフレックスが採用した機構を出来るだけ避ける仕様となっており、当機スパーブは「へそ曲がり」と称されたフォクトレンダーの意地が見えるカメラに仕上がっている。
また、好みはあるかと思うが、ピントフードに付けられた七宝のエンブレムや銘板の刻みなど細部の作り込みも非常に良好。曲線の多いデザインやニッケルメッキの鈍い光と合わせ、非常に優美な雰囲気を醸し出す。

二眼レフとしては珍しく、フイルムを横方向に送る方式を採用しており裏蓋は分割して左右に開く。そのため、カメラ両脇に確保されたフイルム室の膨らみで印象的なデザインとなっている。
フイルム装填は赤窓式で、裏紙の1を赤窓で確認したら右側面のスライドレバーでカウンターをリセットし、以降は背面中央のカウンターを見ながら巻き上げを行う方式。巻き上げは左側面にあるレバーを水平方向に操作して行うが、水平レバーで巻き上げる二眼レフというのも非常に珍しい仕様だ。
ピント合わせはシャッター下側のレバーで行うのだが、このレバーがシャッター外周よりも大きなギアに直結しており、大径のギアがビューレンズ側のギアを回転させ上下レンズが連動する方式。後年日本でも廉価機に多く採用された上下レンズ連動の先駆けとも言えるが、ビューレンズは回転式で繰り出すもののテイクレンズは直進ヘリコイドというこだわりよう。
近接撮影時には、ピントの繰り出しに連動してビューレンズ・ミラー・スクリーンがひとまとまりのユニットとして前傾し、二眼レフの弱点である視差を補正するなど、各所にフォクトレンダーの高い技術が垣間見える。
シャッターはコンパーで最高速は1/250秒。シャッタースピードは、シャッター外周のリング上に逆文字で刻印されており、プリズムを介して上部から見た場合に正文字で見られるという非常に凝った仕様。そのプリズムも可倒式になっており、セットした数値をカメラ正面から確認するのにも支障がない。

テイクレンズは4枚構成のスコパーと5枚玉ヘリアーとが用意され、共にフォクトレンダーを代表する名玉の呼び声高いものだ。しかし独創性に富んだスパーブであったが、戦後に計画はあったものの後継機が発売されることはなく当機一代限りのブランドとなってしまったことは非常に残念だ。

スパーブ オリジナルデータ表

メーカー 生産国 生産年
Voigtlander フォクトレンダー ドイツ 1933年
ビューレンズ
Anastigmat Helomar 焦点距離未記載/3.5 ヘロマー
テイクレンズ
Voigtlander Heliar 75/3.5 フォクトレンダー ヘリアー
絞り 絞り羽根 最短撮影距離
3.5~22 10枚 0.8m
フード取り付け
27mmねじ込み式 29mm被せ式
シャッター
Compur T・B・1・2・5・10・25・50・100・250
シャッターチャージ
独立式 T・Bはチャージ不要
レリーズ
シャッター外周レバー 押し下げ式
巻き上げ 巻き止め
左側面レバー 1枚目赤窓 以降カウンター合わせ
ピント合わせ
シャッター最外周レバー
スクリーン 視差補正
通常 水準器 ファインダーユニット前傾補正
内面反射対策
無し
フイルム送り
右→左
実測サイズ 三脚ネジ
H139×W95×D90mm 920g 大ネジ
データ表の見方

部分拡大画像&ポイント解説

  • シャッターリング周り指標用プリズム絞りダイヤル
    [左]シャッターリングに裏文字で刻まれたシャッター速度 切れているが左にピントレバー [中央]シャッター速度はプリズムを通して見ると正文字となる [右]前板に取りつかられている絞りダイヤル
  • ピント無限遠時ピント最短撮影距離時裏蓋開放
    [左]ピント無限遠時 [中央]繰り出しに応じてビューレンズが前傾する [右]裏蓋開放状態 上にカウンター、フイルム室内上部にカウンター用送り検知ギア 底部はフイルムスプール受けと三脚ネジ穴を用いた変則の4本脚
  • ネームプレート周りピントルーペ革ケース
    [左]ビューレンズ上部では針が距離を指し示す [中央]ルーペは小径だが視野は広い スクリーン脇に水準器 アイレベルファインダー接眼部にも視差補正機構付き [右]革ケースには幾つかのバリエーション

管理人の

挙げればキリが無いフォクトレンダーの名機スパーブの特徴ですが、ファインダー内の水準器やカメラ前面の独立した絞りダイヤルも珍しい仕様です。また、スパーブは数少ないカメラ店購入機種。10年前に比べると格段に買いやすくなったように思います。「スパーブが10万なんて何時時代の値段だよ。」とは私が購入した新宿のカメラ屋さんの弁。私も昔は「戦前のカメラなんて触ると何か取れそう…」って本気で思ってましたが、保存状態がちゃんとしていればそんなことはありませんので。
カウンターの戻りが悪いものや、シャッター速度確認用のプリズムの欠けをよく見かけるので要注意です。戦前のカメラですので光線漏れにも。
余談ですが、個人的に非常に好きなカメラなので、二眼里程標のtwitterのアカウントでは当初からこのスパーブの画像をアイコンとして使用しています。

独断の5つ(平均が★★★は0.5換算)
  • 人気度…★★☆
  • 使いやすさ…★★☆
  • 見つけやすさ…★★☆