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Fujicaflex

1954年発売のフジカフレックスは、販売価格65000円という高価な値段設定と独特のデザインをはじめ、3群5枚構成の83mmF2.8大口径フジナーレンズの搭載などで一躍市場の注目を集めた二眼レフカメラだ。
フイルム装填のフルオートマットを達成した機種であり、「フジカフレックス・オートマット」とも呼ばれる。

富士フイルムで二眼レフ発売の計画が始まったのは、戦後間もない1948年。試作にあたっての大きさやデザインは、アメリカのアンスコ・オートマチックやコダックレフレックス(Kodak Reflex)を参考に進められたとのこと。
富士写真フイルムは感材メーカーであるが故、安価な二眼レフを発売しカメラの普及を図るべきか高級機を出すべきかは社内外からいろいろな意見があったようで、当初は前玉回転式の普及型二眼レフとして設計されていたフジカフレックスであったが、徐々に独特のデザインと先進機構を装備したものへと変わってゆく。

スタートマーク合わせやローラーの間に裏紙を通す必要もないフイルム装填のフルオートマット化は、二眼レフとしてはマミヤフレックス・オートマットAに次ぐ稀有な機構だ。当時と現代の裏紙の厚み等の差異から、フルオートマット機構が上手く動作しないケースもあるが、感知機構の部分はむき出しなので調整等は難しくないと思われる。
フイルム送りも、平面性の確保に有利な上から下に巻き取る方式を採用。
カメラ右側面のノブは、ノブを押し込んだ状態でピント調節として機能し、引き出した状態で回せばフイルム巻き上げとシャッターチャージが可能な珍しい構造となっている。通常使用の最短撮影距離は4ftだが、前板向かって左にある近接撮影用ダイヤルを利用することで、前玉回転式でレンズが繰り出し2.3ftまでの接写が可能。ただし、ファインダー上での視差補正機構は連動せずピント合わせ操作もしやすいとは言い難いので、あくまで緊急避難用と思った方がいいだろう。
シャッターボタンは好みに合わせて左右に付け替えが可能であり、セイコーシャ・ラピッドシャッターの最高速度は1/400秒。裏蓋のロック機構もしっかりした大型のものが用意され、カメラの脚を兼ねる構造。
また、スクリーンフレネルレンズは入っていないものの、長焦点・大口径の仕様からピント合わせは容易な部類である。カメラ前面下部にシャッターロック、向かって右上にはセルフタイマーを装備。

ローライフレックスに追いつけではなく、その上をゆくことを目指したフジカフレックス。後発での参入ゆえ他社との差別化をという想いと、より良くするためのアイディアに溢れている。
名実ともに国産二眼レフの最高機種と呼ばれるカメラであるが、発売翌年には生産が中止され富士写真フイルムからは後継機も普及機すらも発売されることはなかった。

フジカフレックス オリジナルデータ表

メーカー 生産国 生産年
富士写真フイルム 日本 1954年
ビューレンズ
Fujinar 83/2.8 フジナー
テイクレンズ
Fujinar 83/2.8 フジナー
絞り 絞り羽根 最短撮影距離
2.8~22 10枚 2.3ft
フード取り付け
専用バヨネット
シャッター
Seikosha Rapid B・1・2・5・10・25・50・100・200・400
シャッターチャージ
巻き上げ連動式(セルフコッキング)
レリーズ
前面下ボタン 押し込み式 左右交換可能
巻き上げ 巻き止め
右側面ノブ 全自動(フルオートマット)
ピント合わせ
右側面ノブ
スクリーン 視差補正
通常 補助線縦横各5本 マスク補正 ギア近接時は指標
内面反射対策
円筒 バッフル
フイルム送り
上→下
実測サイズ 三脚ネジ
H149×W81×D111mm 1305g 小ネジ
データ表の見方

部分拡大画像&ポイント解説

  • ビューレンズ上部近接撮影ダイヤル・同解除ボタン
    [左]ビューレンズ上部に絞り・シャッター速度を表示 ネームプレートの文字も独特の意匠 [右]近接撮影はボタンを押しながらダイヤルを回す 一度回せばダイヤルはフリーに
  • シャッターボタン周りピントフードエンブレムカメラ底部
    [左]テイクレンズ下側左右に絞り・シャッター速度ダイヤル シャッターボタンは左右に付け替え可能 [中央]エンブレムには富士山 [右]可倒式キーレバーの裏蓋ロック フイルムメモもカメラ底部
  • フイルム室内圧板巻き上げ・ピントノブ
    [左]フイルム室内には遮光用バッフル 上部の小さい穴がオートマット検知で押される部分 [中央]圧板脇の銀ローラーでフイルムの厚みを検知 連動するテコの先が前出ボタンを押す [右]巻き上げ・ピント操作兼用ノブとカウンター
  • ピントルーペレンズフード革ケース
    [左]視野は十分なボタン跳ね上げ式のピントルーペ [中央]レンズフードはローライバヨネットとの互換性は無い [右]革ケース

管理人の

サイト開設当初から、これだけは買うまいと思っていたフジカフレックスでしたが…。下世話な話で恐縮ですが、購入価格はローライフレックス2.8Fの綺麗なものよりかなり安かったとだけ言っておきます。コレクターズアイテムと言われるカメラですが、掲載機はかなり使いこまれている印象です。
最初の頃「イロイロ詰め込み過ぎてて使い辛そう…」などと思っていた己の不明を恥じるばかり。このカメラの持ち出し率はかなり高く、フジナーの83mmという焦点距離はちょっと長いなと思うケースも稀にあるものの、シャッターボタンを右下に付け替えて愛用してます。本文で触れたフルオートマットの未検知問題は、フイルム一本無駄にはなりましたが、銀色のローラーに薄いテープをひと巻きして解決。
中古市場での数の少なさや価格面の問題はあるにしろ、フジカフレックスは国産二眼レフ最高峰と言い切って良いカメラだと思います。

独断の5つ(平均が★★★は0.5換算)
  • 人気度…★★★☆
  • 使いやすさ…★★★★☆
  • 見つけやすさ…