Minoltaflex Automat
1939年という過酷な時代のさなかに登場したミノルタフレックス・オートマット。国産初の二眼レフと呼ばれるミノルタフレックス1型をベースに、またもや国産二眼レフ初であるセルフコッキングを実現したカメラだ。
右クランク巻き上げ、左ピントノブというローライフレックススタイルを踏襲した仕様となっている。
ビュー・テイクレンズやピントフードなどは1型のものをそのまま流用した感じであるが、ネームプレートは縦幅が増えて文字も大きくなっている。前板の側面が黒からシルバーグレーの仕上げとなり、レンズ周りや吊り金具といった部分にクロームのパーツが追加されているため、高級感のあるあでやかな印象に変貌した。
他の変更点としては、シャッターボタンの位置が1型の前板側面から前板下側のボディシャッターに移動し、最短撮影距離も0.8mから一般的な1mとなっている。また、レンズ周りに飾りリングが付いたために31.5mm程度の外径となり、一般的な28.5mm被せ式のアクセサリーは装着できなくなってしまっている。
セルフコッキングとは言うものの、フイルム装填は1枚目を底部の赤窓で確認してカウンターを手動でリセットする方式。2枚目以降は自動で巻き止め機構が有効となり、巻き上げないとシャッターが切れない二重露光防止機構も装備。
テイクレンズは4枚構成のプロマー75mm。旭光学製と言われるこのレンズの評価は上々だったようで、自社製のクラウンIIシャッターも最高速度は1/300秒と実用十分だ。
掲載機のスクリーン中央には、ミノルタフレックス3型で採用されたフォーカスアイという集光レンズが付けられているのだが、資料等でも集光レンズに言及しているものは皆無なため、3型発売以降に改造等で後から付けられたものではないかと思われる。
ミノルタフレックス・オートマットは非常に意欲的なカメラではあったが、生まれて来た時代が民生用工業製品にとってとても順風とは言えない激動の頃。
鋼材や光学関連の良質な素材が入手できなくなり、巻き上げやカウンター周りにトラブルが多発してしまったようである。カメラが売れた時代でもないであろうし、故障等でそのまま廃棄されたしまったものも多いのかも知れない。残念ながら現在の中古市場では見かける機会の非常に少ない機種となっている。
ミノルタフレックス オートマット オリジナルデータ表
- メーカー 生産国 生産年
- 千代田光学精工(ミノルタ) 日本 1939年
- ビューレンズ
- Minolta Anastigmat 75/3.2 ミノルタ アナスティグマット
- テイクレンズ
- Promar Anastigmat 75/3.5 プロマー アナスティグマット
- 絞り 絞り羽根 最短撮影距離
- 3.5~25 10枚 1m
- フード取り付け
- 28mm?ねじ込み式 31.5mm?被せ式
- シャッター
- Crown II B・1・2・5・10・25・50・100・300
- シャッターチャージ
- 巻き上げ連動式(セルフコッキング)
- レリーズ
- 前面下ボタン 押し込み式
- 巻き上げ 巻き止め
- 右側面クランク 1枚目のみ底部赤窓 以降自動
- ピント合わせ
- 左側面ノブ
- スクリーン 視差補正
- 通常 中央集光レンズ? 補助線縦横各2本 マスク補正
- 内面反射対策
- 円筒
- フイルム送り
- 下→上
- 実測サイズ 三脚ネジ
- H136×W75×D96mm 990g 小ネジ
- データ表の見方
部分拡大画像&ポイント解説
管理人の戯言
綺麗な個体がいったいどれほど残っているのだろうか、と言うよりも実用になる動作品がどれくらい残っているのかと思えるカメラです。掲載機も部分拡大画像を見れば一目瞭然ですが、クローム部分の腐食や劣化はかなり進んでいます。ただ、ピントフードや前板のエッジなど、仕上げ自体は良好であったことを思わせる作りです。外観も1型のちょっと野暮ったい感じから、せっかく洗練されたデザインになっているのですが。
掲載機も時々巻き上げが危険な感じで引っ掛かってしまい、完全動作品とはいきません。先代1型と同じプロマーレンズですし、実用優先なら間違いなく中古市場にも数の多い1型を選んだ方がいいと思います。
- 独断の5つ★(平均が★★★・☆は0.5換算)
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- 人気度…★★
- 使いやすさ…★★
- 見つけやすさ…★